テーブルの下でわかんないように手握ったり、目を見つめ合ったりしてさ・もちろんキスなんかしなかったけど、それ以上のことを目と目でしてたかも。
そう、みんなお酒を飲みに行くためにだけバーに行くんじゃない。
自分の好きな人を見せびらかしに行くんだ。
考えてみれば、(したくなければ芸能人の人たちはうちで飲んでいればいいんだ。
もしくはホテルの部屋でルームサービスをとればいい。
そうすれば露見することはないだろう。
だけどみんなそれじゃイヤなんだ。
時代の風がいちばん吹いてくる店に、好きな人と身を置きたいと思う。
人のざわめき、音楽、いちばん新しい風の中で見つめ合う。
こうして思い出って出来ていくもんなんだ。
あの時をどう生きたかの目印は、仕事なんかじゃなく、誰とどんな店に行ったかだもの。
私は原宿の真ん中に住んでいるが、人混みは出来るだけ避けている。
土日の表参道には出ないようにしているし、竹下通りなどももう何年も歩いたことがない。
が、春休みとなると親戚たちが上京してくる。
まあ、おばさんとしてはメイやハトコにスカートの1枚も買ってあげなければいけないわけだ。
そんなもんで半日、買い物につぎ合わされることになった。
行ったところはLである。
ここの前は待ち合わせのメッカだ。
以前私は、夕ごはんを食べようと夫とここで約束していた。
ところがやってきた夫は、私を無視して通り過ぎようとするではないか。
「若い女に混じって、キミみたいな年の人がぼーっと立っていてみっともない」とぷりぷりしている。
確かにLヘ入っていくのは、年齢制限があるかもしれない。
が、今日は付添いという大義名分がある。
日頃はちょっと行きづらいショップも、どれのぞきましょう。
私はこう見えても、可愛いもん好きである。
シノワズリをアレンジした、マーガレットの刺繍のあるツインニットなんかいいなぁ、と思う。
が、高校生のめいっこは完璧にストリート系だから、そういう私をやや軽蔑の目で見る。
私はそのニットを諦めた。
ツインで4万円というのも気にくわない。
不思議なもんで、ふだんブランド品が大好きな私も、Lの中を歩くと金銭感覚がしっかりしてくる。
なぜならここのものはたいてい1000円単位である。
ちょっと高いものも1万円を越すぐらい。
